2020年7月31日(金)
金曜ロードショーは、京アニの「聲の形」の放映。
私は、専門学校の授業で、作品解説をやったりしていて、もちろん何度も見ているのだが、あらためてネットの感想をみてみたら、「感動ポルノだ」などという批判があるらしい。
へえ。
まあ「感動ポルノ」という言い方は、私にはイマイチよくわからんのだが、その批判はかなり違うのではないかという気がする。たしかに「感動して泣ける」んだけど、その理由は、べつに「障害」とは直接関係がないしな。たしかに「聴覚障害」は扱っているけど、これ、あくまでも男の子と女の子の気持ちの行き違いの話……だよね。自虐傾向があって、なかなかコミュニケーションがうまくいかない男女のラブストーリー。
他の登場人物も、完璧な人物は誰もおらず、全員、少しずつ問題があるわけだし、むしろ、そういう凸凹があるような人間ばかりの話。てか、ある意味、「私はイジメなんかしてないよ」とキレイごとを言い張るような子が、どれだけ無責任で困った存在なのか、というとこまで残酷に描いてあるしさ……。
そういう完璧じゃない、なかなかうまくいかない人間関係で、それでも一緒に生きていこう、というところで感動してるわけだから、それのどのへんが「感動ポルノ」なんだろう。
でも、ネット批判などを読んでみたら、「私はイジメにあったことがあるけど、こんなイジメをする男の子を好きになれるはずがない」などと書いてあった。なるほど。つまり、つらい「いじめ体験」をもっている人は、そこのシーンをみるのがつらすぎて、そのあとの展開が納得できなくなる……ということなのかな。そういう心情なら、わからなくもないかもしれないが……。
好き嫌いはあってもいいと思うけど、もしかしたら、それも案外、けっこう複雑な心理なのかもしれないな。
しかし、それはそれで、このヒロインの性格を理解してない気もするな。だって、最初から最後まで、ずっと一貫して、この彼のことが「好き」なんだよな。数年ぶりに再会した時にあわてて逃げたのも、大好きだった男の子が急にあらわれたからだもんな。
「あんなにイジメられたら、その男の子を嫌いになるはず」というのは、それも性格によるわけですよ。この子たちは、そうならない。そこはちゃんとそう描写されていて、それも含めて、大変よくできた作品だよね。どれだけ、ただ「好き」ってのを伝えるのかが難しいかっていう。
とにかく、転校してきてすぐ、つまり最初っから最後まで、ずっと「好き」だったわけで、これはそういうボーイミーツガールの話なんで、そこは「聴覚障害」をもっているかどうかは関係ない。そこがいいわけだ。
じゃあ、なんであの子を好きになったかと言われてもなあ。「なんで好きなのか」って問いは一番むずかしいからな……。