2020年7月16日(木)
先週、創作相談で、ある作品を見せてもらった。生徒ではなく、一般の人が書いたもの。
相談の内容は、こういうものだった。長編を3作ほど書いて『コンテスト』に応募したが、1次選考にも残らなかった。指導をしてくれる人に依頼して、何万円ほどのお金を払って添削を受けたのだが、あまりにもひどいことが書かれていた。
それで、見てほしいという。
まあ、小説コンテスト1次落ちというのは、ま、よくある話で……てか、初心者だとそれがむしろ当たり前なんだけど。
それでも「自分では何が悪いのかわからない。納得できない」というのもよくわかる。
べつに小説講座の入学希望者でなくても、創作相談は無料でやっている。私が見ても、特別なことが言えるわけではないが、とくに断る理由もない。 それよりも5万円も払って、この人が受けた添削というのがどんなのか……。
ついでに教室も見学したいというので、先週、作品をもって来てもらった。授業中、作品を預かって読んだ。
印象としては、いかにも「初心者っぽい」感じだった。日本語としては、おかしいわけではない。が、小説として読んだ場合、いろいろ書き慣れていない感じが強い。たとえば、説明文がかなり多く、描写文が少ない。とくに、冒頭40枚くらい(原稿用紙換算です)、ずーっと説明がつづく構成だった。こんな説明文が続くと、ふつうは飽きてしまう。もう少し早く、シーン描写がほしいんだが……。
ただ、これは、初心者によくありがちなパターンだ。
他にも「視点がポンポンと移動しすぎる」とか「不自然な説明ゼリフが多い」とか、ミステリなのだが「トリックが弱すぎる」(警察の捜査がずさんすぎる)とか……。
だけど、これもどれも「初心者っぽい」だけだ。まあ、こんなもん、1作か2作書いたら、すぐうまくなる。まあ、初心者なら、誰でもこんなもんかなーという感じだ。
それより気になったのは、やはり「添削」だ。たしかに赤ペンで書き込みが書いてあった。たしかにひどいことが書いてあった。コンテストでは確実に落ちるレベルだとか。書き方はこうだ。これこれで、何点減点だ」「また減点」と。
ひええ、たしかに、けっこうな辛口だ。
で、そうやって減点していって、途中で「0点」と書いてある。原稿用紙で80枚あたりかな。うええ、めちゃくちゃスパルタだ。うちの講師では、こういう厳しい指導をするような人はいないので、私はちょっと驚いた。で、たくさん赤が入っているのは、この部分までで、そのあとは量は多くない。後半からは添削といっても、最低限の日本語レベルで。誤字脱字、簡単な文章上の間違いだけだ。わりに素人っぽい。いわゆる校正者とか、編集者がいれた赤には見えない。なんとなく、減点されて0点になった時点からは、別の人が適当に書いた感じがする。
うーん。なんだこれ。これで何万? 5万円?
長編だし、 素人の書いた作品だと、プロの校正レベルでチェックを入れると、ほぼ毎行ぜんぶ直さなくちゃいけなくなるんで、それが難しいのはわかるし、長編ぜんぶは無理なのはわかるし、途中から手抜きになるのも仕方ないが……。それは本人に説明した方がいいんじゃないかな。
それより、この添削を受けて……はたして才能を伸ばすことになるのかなあ。これだけだと、意気消沈するか、ムカつくか……。たしかに発奮して、うまくなる人もいるだろうが、初心者の場合、こんなふうにキツイことを指摘されても、上達ってのにはしにくいような。
それより自分の「長所」をみつけたり、やる気を出せるのが大事。
ただ、読んだ印象としては、ミステリをあまり読んだことがなく、ミステリ好きではない人だという気がした。ミステリ好きじゃないなら、無理にミステリを書かなくてもいいんじゃないかなー。 ま、べつにミステリを書いたらダメということはないが、聞いてみたら、やはり「ミステリ小説が売れそうだから、ミステリの賞をねらってみた」という。
うーん。そういう人、よくいるんだよな……。でも、コンテストに応募して受賞を狙うのなら、その時点で「競争」になっちゃうから。
だから、そんな無理して、好きでもないミステリを書くことないと思うんだよね。それより自分にあった作品を書いていった方がずっといいんじゃないかな。
結局、本人にはそういう話をしたんだけど、気持ちが通じたかしら。