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07/09/2005

なんばで、妖精とランチを食べる

7月8日(金)
午前中、外出。昼からナンバに寄ってから、事務所へ。
生徒作品を読みまくる……つもりだったが、なかなか頭に入らない。なんだか集中力なし。Fさんスケジュール確認、東京の出版社の方などに何件か電話。メールも数件。

昼、食事をしようとして、ナンバの某イタリア家庭料理店に入る。(わかる人はわかってしまうが、金龍ラーメンの裏)。ごくたまにしか行かないけど、ここのランチは、サラダ、メイン料理(5種類から選べる)、デザート、コーヒーに、おかわり自由の3種類のパンもついていて1050円。デザートもしっかりおいしく、4種類のケーキが選べて、ちょっとお得である。

ところで、こういう店に、一人でランチに行くと面白い。というのは、こういう店は女性客が多いので、いろんな話があちこちから聞こえてくるのである。久しぶりにあった友だちとランチに来たという主婦も多いから、かなりアレコレおしゃべりする。そういう話が聞こえてくるのが面白い。おじさんが中心のビジネス街のランチだとこうはいかない。
私の場合は、野次馬根性だけだが、「小説を書いてみよう」と思う生徒さんなんかは、ぜひやってみることをオススメする。こういう会話を聞いて、想像力を膨らませるのも面白いよ。離婚話や個人的な悩みなど、けっこう色々な話が聞ける。昼過ぎのファミレスもオススメ。のぞき見趣味も、いつどんな役に立つかもしれない。

さて、席に座ると、私の右側には、30歳前後くらいの二人の女性が座っており、反対側のテーブルには、女性2人、男性1人の3人が食事をしている。一見して、右側の二人組は、パート勤めか何か仕事をもっている若い主婦らしかった。そのうち聞こえて来た話によると、一人は5歳の男の子、もう一人には3歳の娘がいるらしい。二人とも、日頃は仕事があるので、幼稚園の延長に預けている。趣味はテニスで週2回。今日は、数ヶ月ぶりに会って、ランチを一緒に食べている。

でも、こっちの3人組がわからない。どうも職場の同僚という感じではない。男性はスーツで、女性は会社勤めにしては、ややラフすぎる服装である。しかも、3人とも、一瞬どっかのタレントかコンパニオンか、と思うほど、妙に話し方がはっきりしているのである。彼らは一体、どういう組み合わせなんだろうなと、私は不思議に思った。女性は、二人とも40代くらい、男性も同じくらいの年齢である。しかし、服装はとくに派手というわけでもない。

私は一人、文庫本を読むふりをして、前菜のサラダをつつきながら、「うーん、どういう関係なのかなあ」と考えていた。が、この3人組はものすごい勢いで話をしているので、5分たたないうちに、どうやら、3人は「某ネットワークビジネス」の仲間で、3人ともその団体だけでなく、これまでに、色んなネットワークビジネスをはしごしているらしいことがわかった。
「水をやっていた時」とか「あそこの新しい洗剤はいいらしい」とか「…さんは、今はインターネット関係の仕事して儲けているらしいわ。辞める時の在庫、全部買い取ったらしいし」などと話をしている。よくわからないが、たぶん商品なのだろう。

普通の人は、よほど人前で話をする職業でもなければ、あまり滑舌がしっかりしているものではないのが、こういうビジネスをする人たちは、なぜか、たいへん流暢な話し方をする。どうも3人ともけっこうやり手らしいのだが、「収入が問題じゃなくて、目標をもって自分を磨けるかが大事だから」とか「自分らしい生き方をしたいから」とか、私なら歯が浮くからとてもシラフでは言えないようなキーワードをはさみながら、いろんな情報交換をやっている。どうも反対側の主婦たちよりも、こっちのテーブルの方がよほどおもしろそうだ。私は、本を熱心に読むふりをしながら、そっと左側のテーブルに耳を立てていた。

そこへ遅れて、一人の若い女性がやって来て、その3人のテーブルに急ぎ足で歩いてきた。そして、ちょうど私の横の方のイスに座った。見ると、20歳そこそこの若い女性である。
「遅れてすみません」
「いいのよ。でも、私たち、もうランチ食べ終わっちゃったけど」
そう言って、向かい側に座っていた黒い服を来た女性が、その女性をあとの2人に紹介した。「彼女は、会員ナンバーXXXの、XXXさん。24歳よ」。
すると、その紹介を受けたもう一人の女性が、いきなりこう言ったのである。

「あら、あなた、妖精じゃない?」
「え?」
「私、わかるのよ。あなた、人間の形してるけど、本当は妖精だと思うわ」
「そ、そうなんですか」
若い女性の方も、さすがにとまどった表情を浮かべて、知り合いの方の女性の顔を見た。
すると、その人も笑いながら、
「驚いたでしょ。でも、その人、わかるらしいの」と言う。

「え、私、妖精なんですか?」
「そう。あなたは、人間の形をしてるけど、魂というか、本当の存在は、たぶん妖精なの」
「え、そ、そうなんですか」
「あなたって、純粋な人。純粋な魂の持ち主。だから、人間の世界がこんな汚れてて、びっくりしてるんじゃない」
「あ、そんな……」
「私にはわかるの。だから、色々、悩みとかあるのよね、あなた」
「は、はい……」
「あなたは純粋だから人間の醜い気持ちがわからないのね。それは、妖精だからなのよ」
「そ、そうなんですか」
「そうなのよ。で、注文、どれにする?」

どえええ。あー、びっくりした。いきなり「妖精」だよお。
でも、本人は、真剣な顔をして聞いている。どうやら、ちょっぴり疑いながらも、かなり嬉しそうである。なんだか信用しているふうである。何がびっくりしたかと言って、いきなり初対面の人に「あなたは、ほんとうは妖精よ」と言われて、それを信じる女性がいるってことが驚きである。しかも、よりによって、こんなうさんくさい人に。

世の中には、「私は霊感がある」という人がけっこういる。もしかしたら、「ホンモノ」の人もいるかもしれないし、霊感そのものを否定はしないが、少なくともこれまで私が会った人のうち、9割はかなりうさんくさい人であった(1割は未検証ということにしておく)。でも、どういうわけか女性は、占いも好きだし、「あなたの前世は、カメ(あるいは犬、猫)だった」なんてことを言われても、「あ、やっぱり。そう言われてみればそうかも」なんて、喜ぶようなところがある。この若い女性も、「あなたは妖精」と言われて、たぶんよほど嬉しかったに違いない。ケーキを食べながら、目を輝かせて、熱心に話を聞いている。なにしろ妖精である。でも、ふつう、信じるか? 
信じさせる方もすごいが、信じる方もすごい。まるで、魔術を見ているようだ。やっぱりたまには、仲間とぺちゃくちゃ話をしないで、本を片手に一人でランチを食べてみるもんだ。世の中いろんな人がいるものである。

しかし、私は、聞いているうちに「あんたら、ファンタジーとか、子供の頃もっとちゃんと読んでおけよ」と言いたくなった。たぶん彼女たちは小説なんか読まないんだろうなあ。ちゃんとたくさんバカな小説も読んで、もう少し、いろんなウソにも慣れておいた方がいいぞ。

私は、その妖精の横顔を見ながら、ふと思いついた。「私、知ってるの。これ、ホントは実話なのよ」と、『星の王子さま』を手渡してみたらどうだろう。
「だって、それを書いた人は、そのあと、彼の星に行ったらしいの。本当にあったことなのよ」と真剣な顔をしながら言ったら、きっと彼女なら信じてくれる。
なにしろ、これは、ホントのコトなのである。いや、信じてくれなくてもいい。もし誰も信じてくれなくても、たぶん、あの妖精なら、ぜったい信じてくれるだろうから。

あー、でも、やっぱ、『ピーターパン』でもいいかな。

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